2026年4月23日。
この日は、3回目の外科外来の日でした。
ただ、外科の診察の前に、入院前説明、麻酔科の診察、歯科の診察が予定されていました。
まずは入院前説明です。
看護師の方から、普段飲んでいる薬のこと、入院中や手術中の緊急連絡先、入院生活に関する注意事項などについて確認がありました。
その後、おそらく理学療法士の方だったと思いますが、体の状態を確認する検査も行われました。
歩いたり、しゃがんだり、椅子に座って脚を上げたり、握力を測ったりしました。
手術前に、今の体力や動作の状態を確認しておくためのものだったのだと思います。
入院前説明が終わると、次は麻酔科です。
麻酔科では、手術当日の麻酔について説明を受けました。
ただ、正直なところ、このとき説明された内容はあまり覚えていません。
手術の不安が大きすぎて、聞いているようで、頭にはあまり入っていなかったのだと思います。
ただ、ひとつ覚えていることがあります。
4月の手術だったため、手術当日に実習生が見学に入ってもよいか、という同意書がありました。
私は、自分の手術が誰かの経験や学びになるならと思い、サインしました。
その次は歯科でした。
手術中は口の中に人工呼吸器の管などを入れるため、ぐらぐらしている歯がないか確認する必要があるそうです。
また、術後の合併症には、口の中の菌が関係することもあるらしく、歯の清掃も行われました。
ここまでで、すでにいくつもの説明と診察を受けています。
そして、いよいよこの日の一番大事な予定。
手術方針を確認するための外科の診察です。
前の検査や診察に時間がかかり、外科に到着したときには、予約時間を1時間ほど過ぎていました。
「予約時間を過ぎてしまったけど大丈夫だろうか」
少し不安になりましたが、しばらくすると問題なく自分の番号が表示され、診察室に入りました。
診察室では、いつもと同じように主治医の先生が正面に座っていました。
横の机にはモニターが3つ並んでいて、そのうちのひとつには、前回クリップを付けたことで癌の位置が分かるようになったX線写真が表示されていました。
先生は、その画像を見ながら説明を始めました。
「癌の場所ですが、裂孔ヘルニアの影響で、思っていたよりも高い位置にありました」
その言葉を聞いた時点で、少し嫌な予感がしました。
先生は続けて説明しました。
「この位置だけを見ると、食道を全部取る手術になってしまいます」
やはり、食道全摘の可能性が出てきました。
ただ、そこで話が終わったわけではありませんでした。
先生は、外科の会議でも検討したことを説明してくれました。
「転移も見られない早期癌ですので、最初から食道を全部取るのではなく、まずは食道下部と胃の上部を切除する手術方法で開始します」
そして、手術中の判断について、さらに説明がありました。
「手術中に食道が下がってくれば、食道下部と胃の上部を切除する手術で行います」
「ただし、食道が下に下がらなかった場合は、食道を全部取る手術に切り替えることになります」
つまり、手術は最初から食道全摘で進めるわけではない。
まずは食道を残す方向で始める。
でも、実際にお腹を開けて、手術を進めてみないと最終的には分からない。
食道が下がらなければ、食道全摘に切り替わる。
そういう説明でした。
最初から食道を全部取る手術にならなかったことには、正直ほっとしました。
ただ、その安心は完全なものではありませんでした。
「もし、食道が下がらなかったら」
「もし、手術中に食道全摘へ切り替わったら」
どうしても、その可能性を考えてしまいます。
しかも、その判断が行われるとき、私は全身麻酔で眠っています。
自分でその場で確認することも、考えることも、選ぶこともできません。
麻酔から目が覚めたときに、初めて自分がどの手術を受けたのか知ることになる。
そう考えると、不安は一気に大きくなりました。
食道を残せるのか。
それとも、食道を全部取ることになるのか。
手術方針を聞きに来たはずでしたが、結局、確実な答えは手術当日まで分からないままでした。
もちろん、先生たちは最善の方法を考えてくれている。
転移が見られない早期癌だからこそ、できるだけ食道を残す方向で検討してくれている。
それは分かっています。
それでも、理屈で理解することと、自分の体のこととして受け止めることは、まったく別でした。
診察が終わったあとも、頭の中では同じ言葉が何度も繰り返されていました。
食道が下がれば、食道下部と胃の上部の切除。
下がらなければ、食道全摘。
手術日は、4月28日。
いよいよ入院と手術が目前に迫ってきました。
ただ、私はまだ、手術後の自分の体がどうなっているのか分からないまま、その日を迎えることになります。


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