バレット食道癌(食道胃接合部癌)と告知されてから、大学病院の初診までの約一週間。
この期間が、精神的にはかなりきつかったように思います。
病名は分かっている。
でも、それ以外の情報がほとんどない。
大きさはどのくらいなのか。
どの場所に、どの程度広がっているのか。
内視鏡で取れるのか、それとも手術になるのか。
転移はあるかないのか。
こうやって治療を待ってる間にも進行していくのではないか。
入院はどれくらい必要なのか。
仕事には、どのくらい影響が出るのか。
分からないことばかりなのに、考える材料だけは頭の中にどんどん増えていきました。
その中で、私が一番気にしていたのは、仕事への影響でした。
職場には、昨年、癌の手術を受けた方がいました。
その方は仕事復帰まで3か月ほどかかり、復帰後も在宅勤務を入れながら勤務している状態でした。
もし自分も同じような状態になったら、今の仕事の負荷が高い管理職としての立場で、これまでどおり仕事ができるのだろうか。
そんな不安がありました。
時期は3月中旬。
ちょうど人事異動の時期でもありました。
4月以降に急に休むことになったり、周囲に大きな負担をかけたりする可能性を考えると、早めに伝えておいた方がよいのではないかと思いました。
そこで、癌の告知を受けた翌日には、人事の責任者と、その上の役員に、
「人間ドックで悪いものが見つかり、今後の治療で長期の休暇をお願いする可能性があります」
と伝えました。
また、同じ部署で近くにいる人たちにも、今後、通院などで連続して休む可能性があることを伝え、状況を共有しました。
ただ、伝えたからといって、自分の中の不安が消えるわけではありませんでした。
その頃の私は、暇さえあれば病気のことをネットで調べていました。
同じ病気になった人のブログを読んだり、今後自分に起こるかもしれないことを調べたり、検索しては不安になり、また検索するという状態でした。
個人で課金して生成AIも利用していたので、ChatGPTとGeminiの両方にも、いろいろなことを聞いていました。
使ってみると、私にはChatGPTの方が合っていました。
回答の雰囲気が比較的やわらかく、こちらの不安に寄り添ってくれる感じがあったこと。
また、プロジェクトのように質問内容をまとめておけるので、同じテーマについて継続して相談しやすかったことも理由でした。
一方で、Geminiの回答は、弱っているときの自分には少し鋭く感じることがありました。
もちろん、どちらが良い悪いということではなく、そのときの自分の精神状態には、ChatGPTの方が合っていたのだと思います。
私はChatGPTに、心の友のようにいろいろなことを聞きました。
今後の治療方法。
入院期間。
5年後の生存率。
なぜこの病気になったのか。
手術になる可能性。
仕事復帰までの期間。
再発の可能性。
ただ、聞いている私自身も、分かっている情報は「バレット食道癌(食道胃接合部癌)です」ということくらいでした。
癌の大きさも、正確な位置も、色や形も、深さもまだ分からない。
治療方針を判断するために必要な情報が、ほとんどない状態です。
だから、何度質問しても、返ってくる答えはどうしても似たような内容になりました。
それでも私は、何度も聞き続けていました。
今思えば、自分にとって都合の良い答えを探していたのかもしれません。
「きっと早期だと思います」
「内視鏡で取れる可能性もあります」
「手術になっても治療できます」
そんな、自分を少し安心させてくれる言葉を、どこかで待っていたのだと思います。
その一週間は、常に頭の半分が病気のことで埋まっていました。
仕事をしていても、正直なところ、あまり身が入っていなかったと思います。
家でも、妻から、
「ずっと思い詰めたような、固い顔をしている」
と言われました。
自分では普通にしているつもりでも、不安は顔に出ていたのだと思います。
病名だけを告げられ、詳しい状態は分からない。
治療がどうなるかも分からない。
仕事がどうなるかも分からない。
その「分からない」という状態が、一番つらかったのかもしれません。
そんな落ち着かない日々を過ごしながら、大学病院の初診の日、2026年3月19日を迎えることになりました。
この日から、本格的な検査と治療方針の説明が始まっていきます。
